筋・筋膜性疼痛





一部の腰痛や肩こり、緊張型頭痛、足のコリなどのいわゆる【筋・筋膜性疼痛(Myofascial Pain Syndrome)】は、血液検査や画像診断などでは異常所見が見つからないため、医療機関にかかっても痛みについて理解されず苦しむ患者様が多くいらっしゃいます。
まずは、ご自身の痛みへの理解を進めるためにも下記に【痛みの悪循環】についてまとめました。


【痛みの悪循環】

①筋線維の異常収縮
②局所虚血
③発痛物質の蓄積
④神経感作
⑤痛みの慢性化
→①に戻る

という流れで発症し、鍼治療などの治療はこのプロセスの各段階で治癒促進に作用することが分かっております。

① 筋線維の異常収縮(トリガーポイントの形成)
筋肉に過剰な負荷や繰り返しのストレス、外傷、姿勢不良などが加わると、特定の筋線維が異常な持続収縮状態に陥ります。これはサルコメアが短縮したままとなり、筋の収縮が解除されなくなる現象です。この局所的な収縮部位が「トリガーポイント」となります。


② 局所虚血と代謝異常
筋線維が収縮した状態が続くと、その部位では血管が圧迫され、血流が著しく低下します。これにより、酸素供給が不足(局所虚血)し、老廃物の除去も滞るため、代謝異常が進行します。これが次の段階である発痛物質の蓄積へとつながります。


③ 発痛物質の蓄積
虚血状態により、筋肉内には以下のような発痛・炎症関連物質が蓄積します。

・ブラジキニン
・サブスタンスP
・プロスタグランジン
・ヒスタミン
・水素イオン(pHの低下)
・セロトニン

これらの物質は末梢神経の侵害受容器を刺激し、痛覚神経を興奮させることで痛みを生じさせます。


④ 神経感作(末梢・中枢の感受性亢進)
継続的な化学的刺激と痛み信号により、神経は次第に感作(感受性が高くなる)状態になります。

・末梢感作:C線維やAδ線維が過敏になり、軽微な刺激でも痛みを感じやすくなる。

・中枢感作:脊髄後角ニューロンなどが過活動状態となり、痛みの信号が脳へ過剰に伝達される。結果として、刺激のない状態でも痛みが持続したり、関連痛として広がったりする。


⑤ 慢性化と痛みの悪循環
神経感作が続くと、痛みは慢性化し、以下のような悪循環に陥ります

・痛みにより筋緊張がさらに高まる
(痛み→筋緊張→血流障害→痛みのループ)

・活動量の低下や不良姿勢が筋の使い方を悪化させ、トリガーポイントが再活性化

・慢性疲労、ストレス、自律神経の不均衡も症状を助長



【まとめ】
筋線維の収縮異常
  ↓
局所虚血・代謝障害
  ↓
発痛物質の蓄積
  ↓
神経感作(末梢・中枢)
  ↓
慢性痛と悪循環の固定化